さて、今回からはようやく農業往来の本文に入ってきますよ。
おまたせしました~♪
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~本文を読む~
農業往来
そもそも、のうかかうさくのこと、まづ
抑、農家耕作之事、先
とちのかんかへこうていかんしつを
土地之考高低乾湿
二 一
タカ・ヒク・カワク・ウルヲフ
ようすい てあてをたいが ハもち
用水之手宛大河者勿
ろん、たにかわ・やまはしり みかさ はかり
論、谷川・山走之溢を量
あるい つきはと・いしかき・どてをふせ
或者築波當・石壁・土手臥
二 一 二
ナミアテ
じゃかこをかけ、いしだん・しばハしとうを
蛇籠掛、懸磴・柴橋等
一
あるい ほり・ためいけ・つつミ・ゐみそ・いで
或者堀・溜池・堤・井溝・洫・
ゐせきとうのふしんなくゆたん
井堰等之普請無油断
二 一
くわへしゅほをしのくこうすいかんばつ
加修補凌洪水・旱魃・
二 一 二
ミツ ヒテリ かつすい なんをことたい
渇水之難事第一也。
一
はたまたたづねゆうろうにただしじたの
将又尋邑老糺自他之
ニ 一二
ムラノトシヨリ
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~読み下し文~
農業往来
そもそも、農家の耕作のこと、
まず、土地の高低・乾湿を考え、
用水の手宛を大河は勿論、
谷川・山走の溢を量り
或いは波當・石壁・土手を築き、
蛇籠を掛け、懸磴・柴橋等臥せ、
或いは、堀・溜池・堤・井溝・洫・
井堰などの普請油断無く修補を加え、
洪水・旱魃・渇水の難を凌ぐ事第一なり。
(最終1行は次回)
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~本文の解釈~
農業往来
そもそも、農家の耕作のことは、まず土地の高低や
乾湿を考えて、用水の手当てを、 大河はもちろんのこと、
谷川や山走の水かさを量る。
あるいは、波止・石壁・土手を築き、蛇籠をかけ、
石段・柴橋などをふせる。
あるいは、堀・ため池・堤・井溝・井堰などの普請は
油断無く補修を行い、洪水・干ばつ・渇水の難を凌ぐ
ことが第一である。
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注釈 (1)山走 辞書に載ってないのですが、山中の清水のことを
さすのでしょうか?
(2)溢 水嵩のことでしょう。水の量(『日本国語大辞典』)
(3)蛇籠 中に栗石、砕石などを詰めた、粗く編んだ円筒形の竹
あるいは鉄線製の籠。河川の護岸工事で、土砂の防止、
水流制御などのために用いる。
その形が、大蛇の伏している姿に似ている所からいう。
石籠。じゃこ(『日本国語大辞典』)。
(4)柴橋 柴木を集めてつくった橋(『日本国語大辞典』)。
(5)井溝 田や畑に水を注いでいる溝(『日本国語大辞典』)。
(6)洫 井手のことか。田の用水のため、川などの流れをせき止めてあ
るところ。井堰。(『日本国語大辞典』)。
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○参考までに 近世の河川工事については、
水元邦彦『草山の語る近世』(山川出版社、2003年、800円)
が参考になります。
さらに、河川工事の制度(土砂留め制度といいます)について
詳しく知るには、
水元邦彦『近世の村社会と国家』(東京大学出版会、1987年)
同 『近世の郷村自治と行政』(東京大学出版会、1993年)
また、近世の河川をめぐる支配の仕組みについては、
村田路人『近世広域支配の研究』(大阪大学出版会、1995年)
が参考になります。
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